宇宙と天文学
記事 : 火星に相応しい服装 
05年08月17日(水)


An outfit suitable for Mars

先頃、NASAが次のロボット探査の為の候補地などを検討する為のデータ を収集する火星探査機を打ち上げましたが、地球上ではすでにその先に 存在している有人火星探査の際に、宇宙飛行士達が 火星で作業をする事を目的として考案された宇宙服の試験が行われて いるそうです。これは、月面探査が行われたアポロ・ミッションで 宇宙飛行士達が着用した宇宙服に較べると、遙かに身体にフィットしたもののように見えます。これは、「Mechanical Counter Pressure(MCP)スーツ」と呼ばれるものです。

宇宙空間で人間が生きられないのは、宇宙空間の温度の低さ、宇宙線の強さ、空気が存在しない事などとともに、そこには人間が呼吸や循環の為に必要とする圧力が存在していないという条件が有るからだそうです(例え宇宙空間が快適な温度で放射線が遮られて大気が満ちていても、大気の圧力が低ければ体内には取り込めず、逆に体内の空気が吸い出されてしまうそうです)。 その為現在の宇宙服は、呼吸の為のガスを使って圧力を作り出し宇宙服の全体を加圧しています。例えば、NASAの宇宙服は、200mmHg程度(地上の大気圧は760mmHg)に加圧されているそうです。しかし、これは呼吸の為に必要とされる最低限の圧力でしかありません。これでは身体部分に必要な圧力は得らていない為、空気をそのまま呼吸すると窒素が血中に溶けきれずに泡になってしまうので、宇宙服の加圧に使われているのは「純酸素」です。また、現在の宇宙飛行士達は、4時間ほどかけて窒素を血中から追い出すため、エアロック内で徐々に気圧を下げ酸素の割合を増やすという、「予備呼吸」という過程を経ないと宇宙空間に出ることが出来ないそうです。

宇宙服にかける圧力をこれ以上に高められないのは、これ以上圧力を増加させると宇宙服が「パンパンに膨らんだ状態」になってしまうからです。現在の宇宙服でさえも作業を遂行するのに快適な状態とは言い難い物だそうですが、例えば普通の大気が吸える状態にまでこれを加圧してより膨らませてしまえば、作業など一切不可能になってしまうでしょう。

「MCPスーツ」は1968年に提案されたものですが、身体の部分が必要とする圧力が空気によるものでなく、「圧迫圧」もしくは「接触圧」でも代用できる事を利用して、伸縮性の高い繊維を使ってインナー・スーツを作り上げ、身体を締め付け、身体部分が循環の為に必要とする圧力を得るという仕組みで働くものです(加圧された空気が必要なのは呼吸をする頭部だけです)。このインナー・スーツの締め付けの強さは、現在使われている医療用途のサポーターの5倍の強さになるそうです。この数字を見ると、そのような物を身につけて動き回る事などできそうに無いと思えるのですが、実際には宇宙飛行士達が呼吸する空気がその圧力を相殺する程度に設定されている限り、快適な状態を保てるそうです。

この宇宙服は、身体にフィットしていて動きやすいという事の他にもメリットを持っています。まず、この宇宙服は小さな裂け目が生じた程度なら、問題なく機能するそうです。小さな破れ目は、身体にかかる圧力をさほど低下させません。また現在の宇宙服が180kgという重量を持つのに対して、この宇宙服はわずか39kgでしかないため、地上の1/3という火星の重力の下では、地上で自分の体重を運んでいるのと同様の感覚で動けるだろうと考えられています。ユタ州に有る「Mars Desert Research Station」の施設で、実際にこれを着用してテストを行った「模擬宇宙飛行士」達は、この宇宙服を着て動き回ることが機敏さと涼しさをより多く与える、と報告したそうです。

8月11日〜14日にかけてコロラド州・ボウルダーで開催された、「第八回国際火星学会のコンベンション」では、さらに意欲的な未来の宇宙服の提案も行われています。そのうちの一つが紹介されていますが、藻をしみ込ませた繊維で宇宙服を作りあげ、藻に宇宙飛行士が必要とする酸素を供給させる、というものだそうです。藻の栄養源となる窒素の供給源が、本人の尿になるかもしれないそうですから、記事中ジョークとして語られているように「他人と共有するのは遠慮したい」という装備になるのかもしれません。
訳注 : 記事の説明文の方が本文より長い ;)


荒れ果てた場所にいる宇宙飛行士達の為の、よりスリムな宇宙服

宇宙飛行士達は、宇宙遊泳や月面への着陸に際して、ガス気密の宇宙服を 用いてきました。しかしそれは決して火星で使われることにはならないで しょう。それは少なくとも8月の11日〜14日にかけてコロラド州・ボウル ダーで開催された、「第八回国際火星学会のコンベンション」に参加した 宇宙生物学者達とシミュレーションの専門家達の間では多数意見になって います。

彼らは、解決策がある古いアイデアに存在しているかもしれない、と 語っています。

Mechanical Counter Pressure(MCP)スーツは、圧力を供給する為にガスの 替わりに弾性を使用する事を目指しています。オハイオ州・Yellow Springsの医師であるPaul・Webbが、1968年にこのアイデアの大元になる ものを提案しています。これはかさばるアポロ・ミッションの宇宙服の、 より安全でより柔軟性を持つ代替手段として提案されたのです。しかし、 このアイデアは米国の宇宙計画が最近赤い惑星(火星)に目を向けるまで、 宇宙へと羽ばたくことは無かったのです。

「火星で将来予定されている現地作業に関して、私たちが抱えている一番 大きな問題は、働く為の宇宙服なのです」、とカリフォルニア州・Moffett Fieldに有るNASAのエームズ研究センターに所属する宇宙生物学者の Chris・McKayは語っています。宇宙飛行士達は、彼らが穴を掘ったりよじ 登ったりする事を可能にするだけの軽さと柔軟さを備え、なおかつ過酷な 状況から彼等を保護するような宇宙服を必要とするのです。

ぴったりした服装

Webbのスーツは、医療用途のサポート・ストッキングに使われるものより も5倍も固く身体を締め付ける、弾性を持つLycraのような織物で作られて います。Webbは、その為にそれを身につけるのが難しくなる、という事を 認めています。しかしこの宇宙服は、宇宙飛行士達が吸う空気が宇宙服の 締め付けを解消するのに十分な程加圧される限り、合理的に快適さを保ち ます。「そうでなければ、それはものすごい痛みを与えるでしょう」、と 彼は語っています。

内部宇宙服は、体温を一定に保ち、放射線から宇宙飛行士達を守る、絶縁 性を持つ外部被覆によって覆われなければならないと考えられています。

空気で膨れあがった宇宙服とは違って、MCP宇宙服はそれに小さな裂け目 が生じてもなお機能するだろう、とWebbは語っています。宇宙飛行士達の 皮膚は、穴をふさぐためにわずかにふくらむだけでしょう。また、それは 標準的な宇宙服が180kgという重さを持つのに対して、はるかに少ない39 kgの重さしかありません。火星の地上の1/3しかない重力は、それを着込 んでいても普通の体重と同様の負担しか与えないでしょう。

試運転

Webbのスーツは、既に火星のレベルに近い気圧に設定された圧力室で テストされました。それは地球上では海面上2万4300メートルの地点の 気圧とほぼ同等です。被験者達、こお状態で何とか1時間自転車を漕ぎ 続けました。

オーストラリアのメルボルンに有る航空宇宙会社BAE Systems社のJames・ Waldieによって開発された同様のMCP宇宙服は、ユタ州のHanksville近郊 に火星野外作業のテストの為に設けられた「Mars Desert Research Station」 の2名の「乗組員」達による試験を受けています。その「模擬宇宙飛行士」 達は、彼等に与えられた宇宙服を着込んで砂漠を歩き回り、「本当にきつい 長下着」が、一般的な服装よりも機敏さを与え、より涼しいという事を見 いだした、と伝えられています。

しかし、火星学会総会に参加した専門家達は、未来にもたらされる 彼等がイメージする宇宙服が、さらに創造的なものになることを切望して いました。

フランス・ストラスブールに有る国際宇宙大学のErik・Claceyが説明した ある案は、藻を浸透させた織物で作り出されたスーツというものでした。 そのスーツは宇宙飛行士達の為に、その場で酸素を作り出すことになる かもしれません。主要な問題点は、細菌達を養う為に窒素の源を見つけ だすという所にあります。「尿から得られた尿素が、その供給源になる かもしれません。だとしたら、他人の宇宙服を着るのは遠慮したい、 という事になるかもしれないですね」、と彼はジョークを飛ばしていました。


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