技術全般

記事 : 太陽電池パネルの変換効率を上げる反射防止コーティング 
08年11月05日(水)


“Near Perfect” Absorption of Sunlight, From All Angles
Rensselaer Polytechnic Institute News 11/3

地球上の全てのエネルギーの源は「母なる太陽」で、私達の食べている食物も その本質は「お日様のかけら」なのですが、現代では太陽電池というものを 利用する事によって「太陽光を電気として利用する」という事が目指されます。

太陽電池の効率という話では、一般的に「太陽電池本体で、単位面積あたり どれだけの変換効率を実現できるか」という側面が論じられるのですが、この 記事が伝えるのは、その前の段階になる「太陽電池パネルの表面で反射されて 無駄になってしまっている太陽光を収穫する」為の反射防止コーティングです。

にわかには信じがたいのですが、今回Rensselaer Polytechnic Institute (レンセラー工科大学)のShawn-Yu・Lin教授達が開発した「nanoengineered reflective coating:ナノ技術を用いたミラー・コーティング」をシリコンの 表面にほどこした場合には、パネルに到達した太陽光の96.21パーセントが収穫 されるそうです … しかも、紫外線領域から赤外線領域に及ぶほぼ全てで、 入射角に左右されずに、だそうです。
これが、そのコーティングの実物写真で、材質はsilicon dioxide(二酸化 珪素)とtitanium dioxide nanorods (二酸化チタンナノロッド)だそう です。7つの層が積み重ねられた構造を持っていますが、それぞれの層は50 ナノメートルから100ナノメートルという高さで、写真にみられる様に傾角 になっているそうです。

「chemical vapor disposition:化学蒸着法?」によってシリコン基板の 加工が可能なので、新しいコーティングはIII-V multi-junctionやcadmium tellurideなどを含む、現在太陽電池で使用されているほぼ全ての光電池材料 に施せる、とLin教授は語っています。

太陽光を効率的に利用しようとすると、設備を設置する方位と地表に対する設置 角度というのは、とても重要な要素になりますが、この記事が伝えるコーティン グなら、太陽光のほぼ全ての領域でほぼ無反射状態が達成されるだけでなく、 太陽光の入射角についての制約もほぼなくなるのです … なんだか夢のような 話です。



Rensselaer Polytechnic Institute(レンセラー工科大学)の研究者達は、 太陽エネルギーが直面している2つの大きなハードルに打ち勝つための、新し い方法、新しい「antireflective coating:反射防止コーティング」を発見 し、それをデモンストレーションしました。

そのコーティングは、solar panels(ソーラー・パネル:太陽電池パネル) が獲得する太陽光線の量を増加させます。また、パネルがsolar spectrum: 太陽光を構成する電磁波の束の全体を、ほぼ全ての角度で完全につかまえ られるようにします。研究チームの今回の業績は、高い変換効率と優れた 費用効果を持つ太陽電池の実現を後押しするものです。

「太陽エネルギーを電気に変換する場合には、最高の効率を得るために 光のほとんどあらゆるphoton:光子を吸収できるソーラー・パネルが 求められます。もちろんそれは太陽が空のどに位置に存在しているか、 という事に左右されてはなりません」、と今回の研究を率いた大学の 物理学の教授で、「Future Chips Constellation」のメンバーである Shawn-Yu・Lin教授は語っています。

「私達が今回開発した新しい反射防止コーティングは、それを可能にする のです」


一年がかりで進められた今回のプロジェクトの結果は、「Realization of a Near Perfect Antireflection Coating for Silicon Solar Energy:シリコン 太陽エネルギーの為の、完全に近い反射防止コーティングの実現」、という 論文として、今週の「Optics Letters」誌で発表されました。

未処理のシリコン太陽電池では、パネルに到達した太陽光の67.4パーセント しか吸収されません。つまり太陽光のおよそ1/3が、パネルによってはね返さ れ、結果的にその部分のエネルギーが獲得できていないわけです。

経済的な見地から、また効率の見地から、そういう「unharvested light: 獲得されていない太陽光」というものは、潜在的な浪費であり、同時に太陽 エネルギーの利用の増加と広範囲での採用を妨げる大きな障害になってもい ます。

今回Lin教授達が開発した新しい「nanoengineered reflective coating: ナノ技術を用いたミラー・コーティング」をシリコンの表面にほどこした 場合には、パネルに到達した太陽光の96.21パーセントが収穫されます。 つまり、パネルがはね返してしまって獲得されない太陽光が、3.79パー セントに減少するのです。

太陽光の吸収で発揮されるこの非常に大きな利益は、太陽光を構成する 複数の電磁波領域、紫外線、可視光、赤外線といった全域でもたらされます。 それは、太陽光の利用を「economic viability:経済的に引き合うもの」に 大きく前進させるものなのです。

ソーラー・パネルの多くは、表面の状態とコーティングによって太陽光を 吸収するように設計されています。反射を抑えたり、光を転送したり、光 を透過させるような加工をしたりして … でもそれは「特定の範囲の角度 から」なのです。

例えば、Eyeglass lenses:眼鏡のレンズを用いる事によって、光源から かなりの量の太陽光を吸収し、それを太陽電池に送り込むことが出来ます。 でもその場合、光源がレンズの側面に位置していたり、光線が周辺部から もたらされる場合、そのレンズが吸収して太陽電池に送り込む太陽光の量 は、かなり少ないものになってしまいます。

同様の事は、従来型のソーラー・パネルで実際に生じます。それが既存の いくつかの産業太陽光線収集アンテナが、1日中ゆっくり太陽を追いかけて 動く様に機械化されている理由です。(そうする事によって、ソーラー・ パネル群を太陽のその時点の位置に向けているのです)

そのような自動追尾システムが備えられていない場合、ソーラー・パネルは 「太陽光を最も効率的に獲得する」位置を確保出来ません。つまり、より少 ない太陽光しか吸収出来ないわけです。

でも、太陽光をより多く収穫する為に必要とされるメカニズムには、自動追尾 システムを動かす為のエネルギーが必要になります。またその稼働を正常に 保っておく為にはコストがかかりますし、ミスが生じたり調整不良が生じたり する可能性もあるのです。

Lin教授達が開発したコーティングは、自動追尾式のーラー・パネル群を 時代遅れのものにするかもしれません。彼等が開発した反射防止コーティング は、あらゆる方向からパネルに差し込む太陽光を、等しく吸収するからです。

そのコーティングを施した「静止型のソーラー・パネル」が、太陽が空の どの位置にあっても「96.21パーセント」の太陽光を吸収するだろう、と いうのはとても重要です。

つまり、Lin教授達が開発したコーティングは「太陽光をかなり高い効率で 吸収すると同時に、静止型のより費用効率が高い太陽光線収集アンテナの 新しい世代を実現させるかもしれないのです。

「私達はこのプロジェクトを立ち上げるにあたって、自らに問い掛けました。、 『あらゆる方向に対して有効に働く、単一の反射防止構造を作り出す事は 可能だろうか?』と」

「私達は、from a fundamental perspective:原点に戻ってその問題と向き 合い、私達の理論をテストし、調整し、実際に稼働する装置としてそれを 作り出したのです」、とLin教授は語っています。レンセラー大学の物理学 大学院の学生であるMei-Ling・Kuoは、今回の研究で重要な役割を果たしま した。

典型的な反射防止コーティングは、特定の波長の光を伝えるために設計され ています。Lin教授達が開発した新しいコーティングは、各層がそ下になる 層の反射防止特性を高めるような方法で、7つの層が積み重ねられた構造を 持っています。追加された複数の層は、コーティングの反射防止特性を 増加させる角度に、太陽光の流れを「bend:曲げる」のも助けています。

つまりそれぞれの層は、太陽光を伝えるだけでなく、別の手法では反射され てしまっていた、より下部の層の太陽光を捕らえるのを助けているわけです。

反射防止コーティングの7つの層は、それぞれが50ナノメートルから100ナノ メートルという高さを持っています。それらはsilicon dioxide(二酸化 珪素)とtitanium dioxide nanorods (二酸化チタンナノロッド)で作られ、 傾斜をつけた角度で設置されています。
訳補:nanorodsはナノ技術で作られる棒状構造の物質です。

それぞれの層は、見た目の機能上も密林に似ています。つまり太陽光が 密集した木々に「捕らえられている」ような状態が、人工的に作り出され ているのです。

ナノロッドはchemical vapor disposition:化学蒸着法によってシリコン 基板に設置されています。Lin教授によると、この新しいコーティングは III-V multi-junctionやcadmium tellurideなどを含む、太陽電池で使用 されているほぼ全てのphotovoltaic:光電池材料に施せるそうです。

Along with Lin and Kuo, co-authors of the paper include E. Fred Schubert, Wellfleet Senior Constellation Professor of Future Chips at Rensselaer; Research Assistant Professor Jong Kyu Kim; physics graduate student David Poxson; and electrical engineering graduate student Frank Mont.

Funding for the project was provided by the U.S. Department of Energy's Office of Basic Energy Sciences, as well as the U.S. Air Force Office of Scientific Research.

補足説明
当初の説明の仕方がどうも悪かったようなので、簡易的に
「太陽光 -> 電流」という過程では、原材料となる「太陽光の捕獲」の 部分と、「捕獲した太陽光からの電流の生成」の部分があります。

今回の話では「原料となる太陽光の量を未処理状態の5割り増しに出来る (67.4パーセント -> 96.21パーセント)という事が主張されています。 例えば変換効率が10%の太陽電池Aなら、抗反射コーティング0の条件と比較して 太陽光が5割多く獲得できるなら、5割多い電流が得られる事になるわけです。 (既存製品にももちろん反射を抑えるコーティングはほどこされていますので、 そのままは読めない数字です)

より大きいのが「太陽が空のどの位置に有っても影響を受けない」という部分 です。それは例えば、どんな傾斜角度の屋根であっても、「何も考えずに」 太陽電池パネルを設置できる、という事を意味します。それは大量に敷設する 事を前提にする場合、とても大きいのです。

といったわけで … 「ほんとに実現出来たの?」という記事です。

反射防止コーティング

「新型インフルエンザ」は、非常に事態の展開が早いです。
まず記事の日付を確かめ、必ず表紙で最新情報を見てくださいね。









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