健康と医学全般

記事 : コンピューターによる「うつ状態の自己治療」が現実になる 
08年09月26日(金)


Coming soon: Self-guided, computer-based depression treatment
National Space Biomedical Research Institute 9/24

「Self-guided」という言葉は、ガイド(導く者)無しに何かを行う事を 意味します。それがコンピューターと組みになっている場合には、「コン ピューターに搭載されているプログラムによって、自分で何かを行う」事 を意味する事になります。

この記事で語られているのは、「depression:うつ状態」の管理・治療を 行うコンピュータープログラムです。注意していただきたいのはこの記事が、 「National Space Biomedical Research Institute:NSBRI(米国・国立 宇宙生医学研究所)」によって発表されているという点です。 (http://www.nsbri.org/)

2001年宇宙の旅の「HAL」では有りませんが、宇宙空間で生じる「人間の 不具合」に対処するのは、その行程が長期間になるほど生じうる可能性を 持つ事象が膨大な数に成り得るため、頭の痛い問題になります。

以前に記事としてご紹介した「遠隔操作による外科手術を可能にする ロボット」の話は、そういった援助の手が得られる可能性がほぼ無い 宇宙空間で生じる「人間の肉体的不具合」に対処する為に模索されている 手段の一つでした。

この記事で語られているのは、肉体に生じる不具合よりも、より頻繁に 生じている(生じるだろう)と考えられる、「人間の精神面に生じる不具合」 に対処する為にどんな事が模索されているのか、という話です。

宇宙空間では、当面の間は「限られた人間しか存在しない」、「人間の 入れ替えが行われない」、「移動の自由が無い」状況が続く可能性が高い わけですので、考えてみればこのような方向の研究が真剣に行われるのは 当然なのだと思われます。

… 技術開発の成果は、もちろん「地上の一般人」にも適用可能だ、と 研究者達は語っています。進展が期待されます。



「depression:うつ状態」に自分で対処する為の治療は、間もなくマウス をクリックするだけ、というものになるかもしれません

「National Space Biomedical Research Institute:NSBRI(米国・国立宇宙 生医学研究所)」の科学者達は、長い期間に渡って続く宇宙での飛行の際に、 宇宙飛行士達の安全とミッションの運用にかなりの脅威を引き起こし得る、 うつ状態やその他の心理社会的な問題を認識し、効率的にそれを管理する 事を助ける「interactive:インタラクティブな・双方向性の」、マルチ メディア・プログラムの開発を進めています。

うつ状態の治療を行うそのプログラムは、NASAで開発が進められているもの ですが、プロジェクト・リーダーのJames・Cartreine博士は、そのプログラ ムが地球上でも使われる様になるかもしれない、と語っています。

「このプロジェクトには、多くの人々がself-guided treatment:自己治療 を行えるようにする、という非常に大きな潜在的可能性が存在しているの です」、とNSBRIの「Neurobehavioral and Psychosocial Factors Team」の メンバーであるCartreine博士は語っています。

「Depression:うつ状態というのは、米国の障害日数の最大の原因になって います。そしてそれは、単に時間的な損失が生じるという話では無いのです。 うつ状態というものは『presenteeism:病気である状態で出勤する事』も 生じさせています。その状態では、一見仕事が行われている様に見えますが、 実際の仕事は停止してしまうのです」

うつ状態の治療という今回のプログラムは、Virtual Space Station(仮想 宇宙ステーション)という、複数のタイプの潜在的な心理社会的問題を見つ け出し、任務の前のトレーニングの際に、また任務が行われている間に 支援を行うために使用する事が出来る、マルチ・メディアプログラムの 一部です。

「Virtual Space Station」によって見つけ出される他の問題の中には、 対人的な葛藤、ストレス、心配などが含まれます。

Cartreine博士は、Harvard Medical School(ハーバード・メディカル・ スクール)の研究心理学者です。 ボストンにあるBeth Israel Deaconess Medical CenterのDivision of Clinical Informatics(臨床情報学部)に 所属しています。

彼は、Virtual Space Stationによって、「International Space Station (国際宇宙ステーション)」で活動する宇宙飛行士達や、現在提案されて いる月と火星に向かう任務で活動する事になる宇宙飛行士達が、より容易 にうつ状態の治療にアクセスできるようになるだろう、と語っています。 現時点では、宇宙飛行士達は通信リンクが利用可能な時にだけ、心理学者 達と「音声・画像」での対話を行えるのです。

プロジェクトの共同研究者である、元宇宙飛行士のJay・Buckey博士は、 長い期間継続する宇宙飛行が、宇宙飛行士達にとって厳しい状況になる 場合があるのだ、と語っています。

「宇宙飛行士達が、とりわけ心理学的な問題を持っているというわけでは ありませんが、閉鎖的な宇宙空間という環境は、非常に過酷なものなのです」、 とBuckey博士は語っています。「宇宙飛行士達は、任務でうつ状態に陥る 可能性を持つ多くの難問に直面する事になるのです」

Dartmouth Medical School(ダートマス医科大学)の教授で医師である Buckey博士は、Virtual Space Stationに組み込まれたうつ状態のモジュ ールやその他の局面は、既に実績の有る方法に基づいているのだ、と 語っています。

「これらは、これまで無かったユニークなNSBRIの製品なのです」、と Buckey博士は語っています。「Virtual Space Stationは、実績の有る 治療計画に基づいています。そしてそれは、一般的な問題に取り組む為 にも、非常に有用な手法なのです」


depression:うつ状態に対処する為のこのシステムのマルチメディア・アプ ローチには、Problem-Solving Treatment(問題解決治療法)と呼ばれる、 簡単な過程によってユーザーを導く心理学者を特徴とする、グラフィックス とビデオが含まれています。

ユーザーがそのシステムに従って一連の質問に答えてゆくと、提供された 情報に基づくフィードバックが提供されるのです。

その過程の第一歩は、問題のリストを作製し、取り組む問題を選択する ことです。

2番目と3番目のステップでは、目標設定が設定され、それに到達する為の 方法をブレイン・ストーミングすることになります。

最終的な2つのステップでは、実行可能な解決策のプラスとマイナスの両側面 を評価し、それを実行するための行動計画を作製する事になります。

またそのプログラムは、ユーザー達が楽しい活動を計画し実行する事も 助けるのです。(鬱状態に陥った人々は、しばしばそのような活動を止 めてしまいます) それに加えて、そのプログラムではうつ状態に陥ら ない様にするための予防的な情報や教育的な情報も提供します。
これは、以前に記事としてご紹介した「5ステップで行う問題解決」 という話です。「問題の発見・状況の把握・解決法の模索」の為の手法で、 既に一般的な問題を解決する為の手法として確立されているものを、人間 のこころの問題の自己治療の為のプログラムとして作製するという話です。

その手法では、まず「どこに問題が有るのかを認識」し、「それが実際に 問題なのかどうかを判断」し、「取りあげるべき問題を選択」し、「問題 の本質を定義」し、「どのようなアプローチがあり得るのかを様々に探求」 し、「解決の為の実際の手法を設計」し、「実行する」事になります。

人間のこころの問題の場合、プログラムという形にすると「そこにいて話を 聴いている相手は、人間では無い」という事が最初から理解されている為に、 より自分の弱みを出しやすいという事はあるのかもしれません。
CartreineとBuckeyは、「Virtual Space Station」を設計する際に、29人 の現役もしくは元宇宙飛行士達からの情報入力を使っています。彼等は、 このシステムの持つ他の利益の中には、携帯性とプライバシーが含まれ る、と語っています。

「このシステムは、International Space Stationにフラッシュ・ドライブ に格納して持ち込み、直接そのドライブから動かす事が可能です。ですから システムを使う宇宙飛行士達は、個人データを完全にコントロールする事が 出来るわけです」、とCartreine博士は語っています。

「このシステムは、個人的に利用する事が可能で、安全です。そのシステム を使ったユーザー本人だけが、他の人達とその情報を共有する事ができます」


うつ状態を治療するためのシステムの初期バージョンは、research stations in Antarctica(南極大陸に作られている研究所)で、ベータ・テストが 行われました。南極大陸に作られた研究所というのは、世界の他の場所から 隔離されています。滞在期間と滞在チームの構成という側面でも、そこは 宇宙飛行達に使用される為の「類似環境」として非常に優れています。

Cartreine博士は、その早期のテスト稼働からもたらされたフィードバック が非常に有望だと語っています。またボストン地区の68人のボランティア達 を対象にした最新版の臨床評価が、まもなく始まる事になっている、と語って います。

「私達は、うつ状態を治療するプログラムの性能について研究する事を計画 しています」、と彼は語っています。「私達は、technology industry(技術 産業)に従事している人々などの様な、宇宙飛行士達と似たような状態にある 人々を探している所です」


最終的には、研究者達は多くの異なった設定状況に、そのシステムを適用 させたいと思っています。それは、治療を求めている人々が現時点では 持っていないかもしれない治療へのアクセスを与える事になるのです。

例えば、うつ状態の人々は「primary care physician:プライマリ・ ケアを担当する指定医師」の元を訪れて、治療を求める事がよくあります。 研究者達は、開発中のプログラムが、そのような医院で使用される、もしく は治療を求めている当人が、自宅でそれを使用できるようにプログラムを 適合させることを望んでいるのです。

このシステムは、臨床的な助けが不足している、もしくは医療的な援助が 存在していない農村などの地域でも、有益な働きをするかもしれません。 学校、ソーシャルサービス・オフィス、礼拝施設、軍事基地、刑務所、 長距離航海をする商業船舶、油田掘削施設、水中に設置された研究所、 といったような場所でも、このシステムは有益であり得ます。

The self-guided treatment project is part of the NSBRI Neurobehavioral and Psychosocial Factors Team portfolio, which includes studies on and development of countermeasures for stress, anxiety, interpersonal conflict and fatigue.

Content on stress and anxiety management for the Virtual Space Station is being developed by Dr. Raphael Rose at UCLA. Harvard Medical School and Massachusetts General Hospital researcher Dr. Gary Strangman is studying the depression treatment program’s effects on brain activity using infrared imaging.


猫ぽそっ
精神的な問題では、「問題がそこに有る」事を客観的に認識し、状況を整理 できると、大分事態が楽に進むようになります。ですから、一定レベルまでは、 確かに「自己治療」は可能です。

ですが、例えばうつ状態が深刻な場合、「自分から何らかの行動を起こす事が 出来ない」状況まで、落ち込む事があり得ます。ですから、こういったソフト によって全ての状況に対処出来るようになる、という過剰な期待は持つべき では無いでしょう。

多分最も有効なのは、「血の通った人間が、出来の悪い自分の事を心から心配 していてくれる」事を認識する事だろう、と思っている猫なので …  アリガトウの言葉をぽそっと書いておきます。(参考記事: 「… 気持ちはわかるよ」とチンパンジーは語る

うつ状態の治療のためのプログラム

「新型インフルエンザ」は、非常に事態の展開が早いです。
まず記事の日付を確かめ、必ず表紙で最新情報を見てくださいね。









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