脳と振る舞い

記事 : 特定の記憶を消せるだろうか … 
07年07月02日(月)


Wipe out a single memory
Nature Web News 3/11

この記事は3月13日のものです
GIGAZINEに、他の疾患の治療の為に使われている薬物によって、記憶を消せる かもしれない、という事を伝えた記事が掲載されています。記事の後半部分に 出てきているネズミでの実験というのは、この話です。

ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争などの帰還兵達に見られる精神疾患の 治療の補助手段として、薬物の使用が考慮されている、という報道もありました。


先日、ストレスは子供の脳に物理的な傷を残すかもしれない という記事で、非常に強いストレスに曝された後に発症する事がある精神疾患 である、「post-traumatic stress disorder:PTSD(外傷後ストレス障害)」 というものによって、脳の記憶と感情に関連する領域である「hippocampus (海馬)」が縮小していた、つまり実際に肉体的な変化が生じていた事が 明らかにされた事をお伝えしました。

この記事では、感電という不快なショックを与えている時に特定の音楽を聴かせ、 それを恐れるように訓練したラット達に対して、「U0126」という薬物を与える 事によって、薬物が投与されていた時に思い出していた記憶が消し去られる、 しかも他の記憶には影響が無いようだ、という事が明らかになった事が語られて います。

つまり、非常に強いストレスを生じさせている「特定の記憶」だけを、選択的に 消し去る事が可能かもしれない、という事なのです。

生きてきた時間のかけらである記憶を消し去る事は、人生の一部を失う事です。 でもPTSDなどのような精神疾患は、当人にとって克服しがたい恐怖や苦痛に よって引き起こされる病気で、現時点では治療はとても困難なのです。それは 病気を発症した患者の人生を蝕みます。

もし、記憶を取り除く事が可能になることで救われる人生があるとしたら …  「U0126」は人間に使用するための承認をまだ受けていないそうです。


薬は他の記憶を完全なままに残したまま、単一の恐ろしい記憶を取り 除く事が可能です

他の記憶を完全なままに保ったまま、単一の特定の記憶だけがラットの脳 から取り除かれました。

今回の研究は、記憶が脳の中でどのように作られ、また修正されるのか という事についての私達の理解を増すものです。またこれは、被害者達 に「post-traumatic stress disorder:PTSD(外傷後ストレス障害)」を 引き起こし、その人生を崩壊させる恐ろしい記憶を取り除く事を助ける かもしれません。この研究は「Nature Neuroscience」で発表されました。

脳は「reconsolidation(再統合)」と呼ばれるプロセスを通じて、短期 的な記憶を保存する領域から長期的な記憶を保存する領域に記憶を置き 換える事によって、記憶を安全に保っています。薬によってこのプロセス を中断することが可能だ、という事は既に明らかにされていました。

そして今回、New York Universityの神経科学センターに所属するJoseph・ LeDouxと同僚達は、この妨害作用の明確さがどの程度のものなのか、という 事を知りたいと考えたのです。ある特定の記憶の転送に干渉する事は、他の 記憶に影響せずに行えるものなのでしょうか?

「私達は、記憶のネットワークに実際に何か大変なことをしてしまうのでは 無いか? という事を懸念していました」、とLeDouxは語っています。

恐ろしい音楽

それを解明する為に、研究者達はラット達を感電させるのと同時に、2つの 異なる音楽を聞かせるという事によって、ラット達がそれらの音楽を怖がる ように訓練しました。

次に彼等は、ラット達の半数に対して限定的な健忘症を引き起こすことが 知られているある薬物を与えたのです。(それは「U0126」というもので すが、人間に対して使用する為の承認は出されていません)。そして、 薬を与えられた半数のラット達が薬の影響下にあった時点で、全ての ラット達に対して恐ろしい記憶の一つを思い出させる音楽のうちの一つ が流されたのです。

1日後に、両方の音楽によってラット達の反応がテストされました。薬を 投与されなかったラット達は、感電のショックが襲ってくる事を予期して いるかのように、その両方の音楽を怖がりました。けれども前日に薬物を 投与されたラット達は、薬の影響下にあった時点で思い出させられた音楽 の方を、もはや恐れなかったのです。

感電のショックを受けていた時に流されていた2つの音楽のうち、薬品が 投与されていた時に記憶を再度刺激する為に流された音楽の記憶は、完全 に消え去っていたのです。一方、第二の音楽に対する彼等の記憶は残され ていました。

LeDouxの研究チームは、「amygdala(扁桃)」と呼ばれる脳領域が、この プロセスの中心となっているというアイデアも確認しています。恐ろしい 記憶が形成される場合には、脳のこの部分に存在するニューロンの間のコ ミュニケーションが通常増加します。しかし、それは薬を投与されたラッ ト達では減少していたのです。

これは、薬物が単に記憶と恐ろしい反応の間のリンクを壊すのではなく、 恐ろしい記憶が実際に取り除かれているという事を示しています。

プエルトリコのPonce School of Medicineの神経生理学者であるGreg・ Quirkは、PTSDのような状態に苦しめられている患者達を治療するため に働いている精神科の医師達は、今回の進展によって励まされるだろ う、と考えています。

「これらの薬は治療を補助するものになるでしょう」、と彼は語っています。 「これは精神医学の将来的な姿を垣間見せるものです。神経科学は、それが より有効になるの事を支援する道具を提供する事になるでしょう」


PTSD」、「記憶の消去」、「U0126

「新型インフルエンザ」は、非常に事態の展開が早いです。
まず記事の日付を確かめ、必ず表紙で最新情報を見てくださいね。









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