インフルエンザ

記事 : 他:タミフルはインフルエンザを治さない 
09年01月30日(金)


「タミフル」 「インフルエンザ」検索が多いので再掲されています

2006年1月30日
これは「鳥インフルエンザ」と「タミフル」についてのまとめ集です。
「メキシコでの豚インフルエンザ」の記事が必要なら、Topページの 最新情報とインフルエンザ・カテゴリの最新情報を確認してください。

「豚インフルエンザ」と「タミフル」と「抗体」の関係の部分を必要と している場合には、
   ◇ インフルエンザはウイルスによる病気です

   ◇ ウイルスの増殖と免疫システム・ワクチン接種

   ◇ 新型インフルエンザ

に飛んでください。「鳥」を「豚」に読み替えると大筋で意味がつかめます。



この記事が書かれたのは2005年で、記事内部の記載は2006年1月以降の 最新の情報には更新されていません。ですから、日本企業が開発し、 間もなく市場に登場する予定になっている新しい抗インフルエンザ薬に ついてや、一生有効な免疫を保証するワクチンの研究が、日本でも現在 感染症研究所などによって進められている、などという部分にはふれて いません。

新しい情報は、Topページのインフルエンザ・カテゴリで確認してください。 また、記載について疑問を感じた場合には、「どこのサイトの記載が元に なったのか」を明示してありますので、ご自分で確認をなさってください。

2009/2/11日時点での最新の記事は、
汎用性の高いインフルエンザ抗体が特定された です。


医療関係者は、「タミフル」が健康な人が罹患したインフルエンザの治療に 「無くてはならない・必用な」薬物だ、という事は言いません。1日程早く 楽になる程度の効果しか無いのですから当然です。

タミフルの副作用について考えたい方は、「乳児・インフルエンザ脳症」、 「高熱による異常行動(参考事例:読売新聞07/03/23 インフルエンザ14歳男子、タミフル服用せず飛び降り)」 などの、インフルエンザ関連事項について書かれた説明を読むと、現在 タミフルが異常行動の原因だと言い切れないでいるのがなぜなのか、理解 しやすいと思います。

サイトで紹介した英文のインフルエンザ関連記事の リンク集


この記事内部の目次 : 必用な項目をお読みになられてください

   ◇ インフルエンザはウイルスによる病気です

   ◇ タミフル生産と日本での使用状況について

   ◇ 鳥インフルエンザと新型インフルエンザ

   ◇ 子どもとインフルエンザ・ウイルス

   ◇ ウイルスの増殖と免疫システム・ワクチン接種

   ◇ 新型インフルエンザ

   ◇ yahooの掲示板からいらっしゃった方々へ

   ◇ この記事が書かれた時に感じていた事



お読みになっている皆様へ  2006/1/30改訂版
この記事は2005年11月15日に書かれた物です
もともとは、読売新聞社の社説
[新型流感]「世界の対策に後れを取るな」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20051114ig91.htm
を、読んでいて書いた人の現状認識に違和感を感じた為、書き起こされました。現在は、私自身のインフルエンザの基礎学習の為に情報が更新されてい ます。随時情報が変更されていますので、元の記事から変わっている事をご 了承下さい。(原文は倉庫に有ります)


鼻やのどに起こる急性の炎症の総称が「かぜ」です

症状を引き起こすものは、ウイルス、細菌(微生物)などいろいろです。
かぜによって現れる症状は、入ってきたウイルスや細菌に体が抵抗し、それらを取り除こうとしているために起こるものです。「インフルエンザ・ウイルス」が原因になっているものが、特に「インフルエンザ」と呼ばれています。

ここでも良く取り上げている、抗インフルエンザ薬「タミフル」
タミフルの製造元はスイスのロシュ社です
成分はリン酸オセルタミビルです

タミフルには、インフルエンザを予防する効果はありません
タミフルには、ウイルスを撃退する作用は有りません
また、ウイルスには「抗生物質」も効果を発揮しません。

インフルエンザは、インフルエンザ・ウイルスに感染した後、1〜3日間の潜伏期間を経て、38〜40度の高熱が出て発症しますが、タミフルはウイルスの増殖を妨げ、熱がある期間を1日程度縮める効果があるだけです。(国立感染症研究所の談話より)

人間の身体は「免疫システム」が創り出す「抗体」の働きによって、インフルエンザ・ウイルスを撃退します。タミフルは、インフルエンザ・ウイルスの増加を抑えることによって、「身体の免疫システム」がインフルエンザに対抗する為の「抗体」を作り出し、ウイルスの増殖を止めて、それを撃退するまでの時間を短縮するだけなのです。現時点では、ウイルスは「抗体」でしか撃退できないのです。

その為欧米では、「インフルエンザには安静」が常識で、タミフルのような「抗インフルエンザ薬」は、感染症などの合併症の危険性が大きくなる免疫系が弱っている人達、高齢者や慢性の病気などの要因を持つ人達以外には、ほとんど使われていません。


タミフルと日本


タミフルの昨年の日本での年間販売量は1080万人分でした。日本のタミ フル使用量は、感染シーズン中の処方数で見ると世界の7割を越していた事 が有るそうです。

日本でタミフルを製造(ロシュ社から輸入し販売している)のは中外製薬です。2005年の冬には、2カプセル×4日投与換算で1500万人分を用意する事になっているそうです。(新型インフルエンザ流行時の国内の想定感染者数は2500万人です)
追加情報
タミフルの製造元はスイスのロシュ社です
特許は米ギリアド・サイエンシズ社が持ち、
販売額の10% のロイヤリティーを受け取っています。
ちなみに日本では中外製薬が輸入・製造販売しています。
成分はリン酸オセルタミビル

ロシュ社によると、これまでにタミフルを服用したのは全世界で3200万人。そのうち、日本人が2400万人を占めているそうです。3/4ですね。全世界の50分の1の人口しか無い国の数字としては、凄まじすぎる数字です。

実は、少し前の記事で「ライセンスを締結する前にタミフルの製造を開始してしまえる(特許を無視できる)国がうらやましい」と書いたら、この数字を教えていただきました。この数字は、中外製薬の抗インフルエンザウイルス剤『リン酸オセルタミビル』2005−2006年シーズンの供給計画について」によるものです。
ただし、現在は「通常のインフルエンザ」に、「免疫システムのしっかり発達した健康な大人」(飲んでも飲まなくても病状にはほとんど影響が無い)がかかっている場合にも、それがふんだんに処方されている為、日本では「タミフルの備蓄」はほとんど進んでいません。

現在は「新型インフルエンザ」に対応する為に、世界各国で「タミフルの備蓄」が進められています。「お薬好きの日本」以外では、通常のインフルエンザでの発熱を一日ほど短縮する為に「高価な」抗インフルエンザ薬を処方する習慣が無いため、薬がそもそも出回っていないので、どこも非常に薬は不足しています。しかし彼等は、通常のインフルエンザにそれを使わずに、新型インフルエンザに対する「備蓄」としてそれを購入しています。


鳥インフルエンザと新型インフルエンザ


今回流行している鳥インフルエンザは、その表面に有るタンパク質の型による分類で「H5N1」型、と呼ばれています。
ウイルスの呼び名について

インフルエンザ・ウイルスには複数の種類があり、「H?N?」型と呼ばれます。ウイルスを分類するときに使われている「H」と「N」という記号は、 ウイルスの表面に有る、「haemagglutinin(ヘマグルチニン)」タンパク質と「neuraminidase(ノイラミニダーゼ)」タンパク質の頭文字です。「haemagglutinin」タンパク質には1型から15型までの種類が有り、一方neuraminidase」タンパク質1型から9型までの種類が有ります。つまり「H5N1」型ウイルスというのは、「haemagglutinin」タンパク質の型が1型、「neuraminidase」タンパク質の型が5型、という組み合わせを持っているウイルスだという事を示しているのです。

参考情報: ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼについて
東京都立衛生研究所 微生物部 ウイルス研究科による

ウィキペディア 「インフルエンザウイルス」について
ウィキペディアの情報は玉石混淆ですが、これは信用して大丈夫です
このウイルスは、「鳥」にインフルエンザを引き起こすウイルスなのですが、感染を起こした鳥と非常に密接な接触を持っていた人間が病気に感染し死亡する、という状況が起きています。つい最近まで、人間への感染が起こっていた地域は東南アジアに限定されていましたが、既に中国とトルコが感染地域に加わり、両方で複数の死者がでています。

今回のウイルスが「H5N1」型、と呼ばれている事からも判るように、ウイルスには複数の種類が有り、それぞれの感染力や毒性は異なります。普通一般には、動物の病気が人間に感染する事はあまりないのですが、「インフルエンザ」の場合は、過去に世界的な規模で流行を起こし、多いときには数千万人を殺してきた「人間のインフルエンザ」が、なんらかの時点で鳥のウイルスが人間への感染性を獲得した変異型のウイルスによって引き起こされた事が判っている為、国連や各国政府によって、「鳥インフルエンザ」に対する世界的な規模での警戒態勢が取られています。

「鳥インフルエンザ」の感染が起きている国々は、裏庭農業ともよばれる家畜と人間が非常に近い場所で生活する農業スタイルをもっています。また、病気に対する知識の普及が遅れている事も指摘されています。その為、「鳥インフルエンザ」の発生時にウイルス感染が、人間や「鳥と人間のウイルスの両方に感染する豚」へと広がり、人間に感染する力を持った「新型のウイルス」が出現する危険性が増す事が懸念されているのです。

鳥インフルエンザは「鳥」の病気で、鳥たちは空を渡る生き物なので、感染拡大を制御するのは非常に困難です。また自然の「渡り」によって感染が拡大するだけでなく、ペット用途や食用のための生体貿易によっても病気が拡大しているかもしれない、と指摘されています。

そのような状況の一方、病気に対応する為の手段は極端に少ないのです。
ウイルスに対応できるのは、「人間の身体の免疫システム」だけなのですが、いかに優秀な免疫システムでも、新しい病原体について学習し、それに対応する為には時間が必用です。そして、免疫システムに病原体に対応する為の学習の時間的な余裕を与えているのが、ウイルスの増殖を阻害する「タミフル」などの薬物なのです。

現時点ではまだ新型の「人間に感染するインフルエンザ」は登場していないため、日本で感染すると健康への危険性が大きい病気に対して義務化されている「ワク チン接種」、という手段は使えません。通常用いられているインフルエンザ・ワクチンの製造には、元になるウイルスが必用なのです。ですから今の現時点では、ウイルスの増殖を阻害する機能しかもたない、ごく限られた薬物でしか「新型インフルエンザ」には対抗できないという事になります。

ですから、慢性疾患等の症状が無い「免疫システムがしっかりしている」大人には、タミフルの投与を行わず(結果は、一日程度熱が高い事を我慢する事になります)、まもなく出現する事が予想され得る「死ぬかもしれない病気の時の為にそれを備蓄する」、という事をきちんと説明するのが正しい対応のように思えます。  … まさか、資金が無いとか? … 日本でそれを言ったら備蓄に対応できる国なんてないですよね。
参考情報
タミフルの薬価は1錠約363.7円です。
必要量は5日分(一日2錠)ですので3637円になります。
日本の経済力を考えれば、「命の値段」としては格安です。

子どもとインフルエンザ・ウイルス


タミフルを飲んでも、インフルエンザは治りません。
タミフルは、インフルエンザ・ウイルス数の増加を抑えるだけです。
インフルエンザ・ウイルスを撃退しているのは、身体の「免疫システム」です。

ですから、身体の「免疫システム」がまだ未発達な(もしくはインフルエンザ・ウイルスに遭遇していない)子どもの場合には、タミフルを服用してウイルスの増殖を抑えても、身体の免疫システムがウイルスについて学習し、それを首尾良く撃退するまでには時間が余計にかかります。

これはインフルエンザに限った事では無く、そもそも人間の免疫システムが新しい病原体に対応するまでには、有る程度の「時間」が必用なのです。これは幼児期に義務接種のワクチンを投与せず(母親が悪い)、大人になってからそのウイルス・病原体に感染すると、病気を発症する事からもわかります。つまり、感染は日常的に生じているのだが、「病原体の多くは、人間が備えている免疫システムによって撃退されている」というのが、病気については正しい見方だそうです。

インフルエンザの場合には、子どもの免疫システムがまだ未熟な為に、「タミフル」を投与してから4日目以降に耐性を持つインフルエンザ・ウイルスが体内にあらわれて、それが周囲にまきちらされている、という日本の研究者の報告が、昨年の今頃「ランセット」という医学誌に発表されていました。大人ならば速やかに撃退できる病原体でも、免疫システムの完成度が低い子どもにとっては油断できない、という話です。

これは、子どもがインフルエンザ・ウイルスに感染した際に中途半端な期間(量)の「タミフル」投与が行われると、感染者の体内で「タミフルを投与しても増殖出来る」怖いウイルスが生み出されてしまう、という事を意味しています。薬の服用に際しては、きちんと医師の指示に従い、処方されたとおりに薬剤を服用することが大切だという事です。また、免疫システムが未熟な子ども達が集団で生活する場である学校が、インフルエンザの流行時に「強制休校」になるのは、非常に正しい措置だという事がわかります。
情報追加
ベトナムで、鳥インフルエンザによって死亡した人たちから、「タミフル」に耐性を持つウイルスが分離されています。人間から人間へ感染する能力は持っていませんが、タミフルが効力を発揮しないウイルスの出現は、将来の流行の際の「タミフル」の有効性に疑問を投げ掛け、懸念を高めるものです。

アマンタジン耐性を持つウイルスが増加している
米国の疾病対策センター(CDC)が、米国でこの冬のインフルエンザ感染患者から分離された「A香港型インフルエンザ・ウイルス」の91%が、塩酸アマンタジンを成分とする「アマンタジン・リマンタジン」に耐性を示した事を発表しています。つまり、これらの薬を投与してもなんら効力を発揮しない状態になっているのです。

インフルエンザ・ウイルスの変異能力は非常に高く、2年前には1.9%だった塩酸アマンタジンに耐性を持つウイルスは、昨年の流行時には14.5%に増加し、今年はとうとう91%が耐性を獲得する事態になっています。特に、薬剤が不適切な管理の元でふんだんに使われている場合には、ウイルスの薬剤耐性獲得の機会も増加する事が懸念されるそうです。

タミフルに耐性を持つ「人間のインフルエンザ・ウイルス」が激増している、という報告は幸いまだ出ていませんが、日本での「タミフル」の乱用状況をみると、耐性を持つウイルスが出現し増加するのは時間の問題だ、と指摘している文献もみられます。
インフルエンザ感染で病院に通院する、という日本独特の習慣(ウイルス感染の治療に有効なのは身体の作り出す抗体のみなので、本質的には感染後に病院に行く事は無意味です。病院に行くのは予防接種の為、というのが対応として正しいでしょう)が存在している為に生じているメリットも有ります。普通の病院・医院にも「インフルエンザ」の迅速判定キットと「タミフル」が置いてあることが多いのです。患者さん達を診察する医師達が、診断キットの使用法に熟達しているというのは、新型インフルエンザの流行時にも、非常に心強い事だと思います。


ウイルスの増殖と免疫システム・ワクチン接種


インフルエンザウイルスは、人間の細胞に入り込み、その細胞の複製システムを利用して自分(ウイルス)の複製を大量に作り出し、細胞から飛び出して他の細胞に取り付くことによって感染を広げます。「タミフル」は、感染した細胞から増殖したウイルスが外に出ることを妨げる作用を持ち、結果としてウイルスの増殖が妨げられます。

ウイルスは、37度ぐらいで最も増殖が活発になり、39度ではほとんど増殖できない状態になります。インフルエンザの感染時の発熱は、ウイルスを増殖させない為に身体が作り出している一種の防御反応だとも言えるそうです。その為、ウイルスの増殖を抑え込むための防御作用である発熱を「解熱剤」によって人為的に下げるとウイルスは増加するため、特に「免疫システム」が弱い幼児・小児の場合には、安易な親の判断によって解熱剤を与える事が危険をもたらすそうです。

インフルエンザの感染に対抗する為の有効な手段は「ワクチン(予防接種)」だけです

予防接種とは、毒性を弱めた(不活性化させた)病原体・ウイルスを人間にあらかじめ接種する事によって、身体の「免疫システム」に病原体に対応する「抗体」を作りだす為の学習をさせ、実際の病原体による感染が生じたときに速やかにそれを撃退できるようにするものです。
異物の侵入と免疫システムの対応について 簡易版

人間が生まれた時には持っていない免疫で、誕生後に「抗原(病原体)」と遭遇する事によって獲得される免疫を、「特異免疫(獲得免疫)」と呼びます。免疫システムが、「抗原」に出会うたびにそれぞれの「抗原」ごとに最良の攻撃方法を習得し、その方法を記憶するものです。

体が新しい「抗原」に遭遇した際に、特異免疫が獲得されるのには有る程度の時間がかかります。けれども、再度同じ「抗原」に遭遇した場合、その後の反応は非特異免疫に比べて迅速でその効力も高くなります。この辺りは「本来は身体に無害な花粉」に、身体の免疫システムが迅速に対応する事によって引き起こされている「花粉症」について思い浮かべると判りやすいと思います。

生体にウィルスや細菌が進入すると、「身体の免役システム」はそれを「異物」だと判別して攻撃します。この免疫システムで働いているのがリンパ球・マクロファージ・好中菌などです。マクロファージや好中菌などは、身体に入りこんだ「抗原(異物)」が何であっても、常に同じ方法でそれを排除しようとします。それに対して長いものは数十年の寿命を持つリンパ球は、それぞれの「抗原」に対抗する為の情報を学習・蓄積し、それぞれに異なる最も有効な手段で攻撃を行います。

リンパ球は大きくわけると「B細胞」と「T細胞」に分かれます。
「B細胞」は「抗原(病原体)」 に対して特異的に結合することのできる「抗体(免疫グロブリン)」を作り出します。
もう一方の「T細胞」は、ウイルスに感染した細胞や、がん細胞を殺傷する能力をもっている「キラーT細胞」と、B細胞の抗体産生を活性化したり、他のT細胞を活性化させる働きをもつ「ヘルパーT細胞」に分かれます。さらに免疫反応を終息させる働きを持つ「サプレッサーT細胞」もきちんと用意されています。

そのほかにも、酵素などによって「抗原」の細胞膜を破壊して殺す能力を持ち、病原体の侵入を知らせる物質であるサイトカインをつくり出す「ナチュラルキラー細胞」、貪食(どんしょく)作用によって細菌や損傷した細胞などを食べてしまう事でそれらを排除する「マクロファージ」、「好中球」、「好酸球」などの身体の多くのシステムが免疫という仕組みに関わっています。

よりしっかりとした情報のための参考資料
メルクマニュアル家庭版、免疫システムのしくみと働き
メルクマニュアル家庭版、非特異免疫
メルクマニュアル家庭版、特異免疫
メルクマニュアル家庭版、加齢による影響
インフルエンザの予防接種は、その年の流行に合致したワクチンが使用された場合には、大人では有効に働きます。けれども、ほとんどのインフルエンザ・ワクチンは人間の身体の「免役システム」の重要な一員である「T細胞」を活性化させない(獲得免疫が得られない)のだそうです。

予防接種にせよ感染にせよ、非特異免疫によって作り出された「抗体」は一定の 時間で消えていってしまいますので、「変異性」が高く、予防接種によって身体 に創り出された「抗体」が有効な型から、それとは少し異なる型にすぐに変化し てしまうインフルエンザ・ウイルスは、結果として「抗原・抗体反応」による 身体の防衛網をすり抜けてしまう事になっています。ワクチン接種によって身体 に作り出された「抗体」が、その後の一生分の免疫を提供する事を保証せず、 「毎年インフルエンザに感染する」、酷い場合には「一冬に型の違うインフル エンザを複数経験する」という不幸な事が生じているのはこのためだそうです。

ただし、変異型であっても以前の特性を幾分かずつ持っている事や、免疫システムが未知の病原体に対応する為の学習能力を持っている事などの理由によって、免疫システムが変異したインフルエンザ・ウイルスに対して完全に無力だ、という事にはならないそうです。例えば1918年に世界中で流行し数千万人を殺した感染力の強いウイルスが今再登場しても、そのウイルスが持っていた特性の一部がその後に流行したウイルス達に引き継がれ、現在の大人のほとんどが、部分的に有効に働く事が期待できる「抗体」を作り出せるため、何千万人もの死者が出ることにはならないと言われています。

HIV(エイズウイルス)の感染によって引き起こされるAIDSがとてもやっかいなのは、HIVが最も好んで感染するのが免疫システムの中心となっている「ヘルパーT細胞」で有るため、免疫システムの働きが破壊される事にあります。その結果として、どこにでもふんだんに存在しているありふれた病原菌を身体が撃退できなくなってしまい、感染症によって死亡する事態が生じてしまうそうです。

追加情報 : きちんとしたワクチン情報を求める方の為のリンク

インフルエンザワクチンについて
国立感染症研究所
日本の感染症対策の総本山です
現在の「高病原性鳥インフルエンザ」情報も当然一番正確で早いです

インフルエンザと予防接種 厚生労働省による啓蒙資料

子どものインフルエンザワクチン
高下小児科医院の院長の「高下泰三」先生の解説
札幌市の広報です
「新型インフルエンザ」に関しては、大人の免疫系も子どもと同様に未知のウイルスに対応する事になるわけですから、この解説は非常に参考になると思います。

インフルエンザワクチンについて 横浜市衛生研究所感染症

WHOは毎年流行しそうなインフルエンザを予測し、各国の担当部署にそれを伝え、それに基づいてワクチンが生産されています。過去10年間ではずれた事が1度有ります。また、流行する型は、同時に一つとは限りませんので、ワクチンが対象としていない、少数派のウイルスに感染することもあり得ます。病原菌が原因で起こるかぜについては、当然ワクチンは効きません。WHOではインフルエンザのワクチン接種を推奨していますが、現状の日本の接種率は全人口の一桁を少し上回った位で、先進国中最低です。

仕事を休めない人はあらかじめワクチン接種を受ける、という知識さえも持っていないというのでは、困りものです。当然ですが、先進国の共通の常識は、「感染してからのタミフル」では無く、「感染を防ぐ為のワクチン接種」です。

現在のワクチン接種による死亡数は、1000万人以上の年間接種者数に対して、高齢者の中に数例有るだけです。それも、ワクチンによる影響かどうか疑問があるものを含めての数字だそうです。それに対して、インフルエンザ脳症で死亡する子どもは、一年に100人を超えています。取るべき行動は、当たり前に判断できると思います。(免疫系の弱い幼児を感染から守るためには、周りの大人がワクチン接種を受けて、感染を予防することが必要なのです)


新型インフルエンザ


「通常のかぜより症状が激しい」が、「自然に治る」現在のインフルエンザと、新型インフルエンザの場合とは、実は少し状況が異なります。病気に対応して働く人間の「免疫システム」は、現在脅威が高まっている「鳥インフルエンザが変異して発生する新型インフルエンザ」に対応した事が無いからです。

これは通常のインフルエンザ感染・ワクチン接種でも、有効な「長期的な免疫」が獲得されていないという現状を考えると、ある意味では通常のインフルエンザの変異と同じ状況ではあるのですが、新型ウイルスへの変異が懸念されている「H5N1」型の鳥インフルエンザ・ウイルスは、現在人間で流行している「喉や気道でのみ増殖する」インフルエンザ・ウイルスとは異なり、「全身で増殖する」ウイルスである為、それが人間感染型に変異した場合には、危険性が非常に高いものになると見られています。

人間の身体の「免疫システム」は、増殖能力の高いウイルスに対応するのにも、通常のウイルスと同じだけの時間が必用です。その場合有効な「抗体」が作り出された時点では、通常のインフルエンザの数千倍の量のウイルスに対応する事が必用になるかもしれません。それは、サイトカイン・ストームの発生を懸念させます。

ウイルスが非常に高い毒性を持つ事などから、今の状況は1918年に鳥のインフルエンザが変異して人間に感染を広げ、世界的に大流行して何千万人もの人間を殺した時と似ている、と言われています。実際に、「H5N1」型のウイルスは、より最近流行した「アジア風邪」や「香港風邪」よりも「1918年のスペイン風邪」に似たタンパク質構造(毒性)を持っているそうです。実際、「鳥のインフルエンザそのもの」が人間に感染した東南アジアでの事例の場合、医療設備が完備した病院に入院し、タミフルが投与された場合も含めて、半数以上が死亡しているという非常に致死率が高い状況になっています。

もちろん、致死性が極端に高い場合には、そのウイルスの感染はあまり広がりません。先日からトルコに飛び火している「鳥インフルエンザ」感染では、死亡率が東南アジアでの感染に比べて低下している事が注目されています。(Bird Flu Strain Diversified, May Be Harder to Conquer) より死亡率が低いウイルスの方が感染の存在が気づかれにくく、より広範囲な感染を引き起こすそうです。死亡した患者達から採取されたウイルスは、人間の間で感染を引き起こす能力を持たない事が確認されましたが、感染を限定した地域に閉じこめるための努力は続いています。

また、免疫システムが未発達な子供の場合、ウイルスを制圧するための時間が長くかかるため、薬剤耐性を持つウイルスが出来やすいと書きましたが、「新型インフルエンザ」が登場した際に、ウイルスの増殖能力が高い場合には、健康な大人の免疫システムであってもウイルスを制圧する為には、より長い時間が必用になる可能性があります。(まあ、今後ウイルスにどのような変異が起き、どのような状況で人間に感染するタイプが出現するかにもよるそうですが) その為一部では、「タミフル」の短期投与による「耐性獲得型新型ウイルス」の出現も懸念されています。増殖力が高く、増殖抑制のための薬物が効果を発揮しないウイルス、というのは絶望的に危険です。

「タミフル」耐性ウイルスの出現という懸念に対応する為に、厚生労働省はこれまで1人分を3日間投与として計算していた「タミフル」の備蓄量を、4日〜5日間投与とすることを決定しました。必要量は、1億5000万カプセルから2億〜2億5000万カプセルに増加します。(現在の日本の年間製造量は、1億2000万カプセル程です)
参考記事 : ウイルスの性質について
1918年のインフルエンザ・ウイルスは復活します
鳥インフルエンザが猫の肉体的に与える損害が非常に大きい事が明らかになった
複数の鳥インフルエンザ・ウイルスの遺伝子が解読されました
迅速なワクチンは迅速なスタートを提供する

参考記事 : ウイルスと薬物について
研究者達は、より多くの種類の新型インフルエンザ薬を要求しています
戦時下の戦術は、乏しい新型インフルエンザ薬の力を倍増させます

最近の報告

ベトナムで死亡した患者から分離された「鳥インフルエンザ・ウイルス」が、「タミフル」に対する耐性を持っていた事が判明しています。タミフルは増殖を抑えるための薬ですが、それが効かなかった為ウイルスの増殖が止められず、患者の身体の免疫システムが大量のウイルスに対応できずに、死亡したと考えられています。(参考記事:鳥インフルエンザ・ウイルスが「Tamiflu(タミフル)」に耐性への耐性を獲得したようだ

鳥インフルエンザに感染した患者達の肺などの組織を調査したところ、免疫細胞が分泌する「サイトカイン」と呼ばれる物質の量が通常のインフルエンザに比べて異常に多いことが判明しています。これは免疫システムに「サイトカイン・ストーム」と呼ばれる暴走現象が起きたことを示唆する物だそうですが、それによって体内の臓器がうまく働かなくなる事があるそうです。

仏製薬大手サノフィ・アベンティス社が、年内にも鳥インフルエンザへの感染を予防するためのワクチンの臨床試験を終え、製造承認申請を取る見込みです。

国立感染症研究所では、予防用に接種する新型ワクチンの開発を進めるための動物実験を既に終了し、2006年初頭、まもなく臨床実験を開始するとワクチンメーカー4社と共に発表しました。試験や承認審査が順調に進めば、2006年秋には実用化が可能になるという話が聞こえてきています。増産のための設備に関しては、難しい部分があるそうです。

ロシュ社は、鳥インフルエンザの治療に効果が高い抗インフルエンザ薬「タミフル」の自社生産能力を、06年末までに年産3億錠に増強すると発表しました。2004年の生産能力は3000万錠だったそうです。

この記事が書かれた時に感じていた事


インフルエンザを「予防・軽減する効果」を持つのは「ワクチン」です。
インフルエンザ・ウイルスを「制圧する能力」を持つのは「身体の免疫システム」です。


実は、世界的な流行が起きる前に、人間の身体の中に有効な「抗体」を作り出せるワクチンが、多人数に接種できるだけの量確保できるかどうか、というのが一番大事な部分で、ウイルスの増殖を抑える「タミフル」の備蓄は二次的なものでしかないのです。免疫が獲得されていない状態では、病気に対する安全性は保証されません。

今の時点では、新型インフルエンザに感染した後に「タミフル」を投与する事が、はたして有効なのかどうかも実はよく判ってはいないのです。逆に、これまでは48時間以内でないとタミフル投与は効果が無い、とされていたものが、その期間を過ぎてからの投与でも有効性を発揮した、と見られる事例も有ったそうです。

ともかく、鳥インフルエンザの感染が世界に拡大していて、開発中のワクチンが間に合わない可能性が出ているときに、せっかく手元にある有効な札を無駄にするのは、選択として正しくないような気がします。

「世界の対策に後れを取るな」と叫ぶなら、国内で普通のインフルエンザにふんだんに使われているタミフルを、優先的に備蓄に振り向ける事を提案すべきなのではないのですか? それに、病気に対応する為の優先事項を考慮せずに、無意味に危機感をあおる事は無意味に思われます。世界のインフルエンザ対策が、ワクチン接種の拡大だ、という事くらいはきちんと説明しないと片手落ちでしょう。

いったんはやり始めたら、インフルエンザは空気感染をしますから、感染拡大はたぶん止められないです。まずインフルエンザについての基礎知識をしっかり広めるのが、新聞の社会の木鐸としての使命のように思えます。

当然ですが、薬はお医者さんが症状を見て「その人に必要な薬」を処方しています。そして、タミフルを飲めば身体が大量のウイルスと戦わずにすむため、一般に症状が軽くてすみます。これはタミフルが現在の健康な大人が感染した場合のインフルエンザの症状の緩和のために必要だという度合いが、死亡率が高いと予想される将来の感染に備えるための「備蓄」の必要性よりも高いのかどうか? という話です。念のため


2007/02/17 追記
インフルエンザ感染とタミフル服用に関して
例えば、毎年川が氾濫してコレラが流行する地域があったなら、川の氾濫 を抑えるための改修工事を行うのが当たり前の対処でしょう。それをせず に、川の氾濫による衛生環境の悪化によって発生するコレラ感染に対処す る薬だけを準備する、などということは絶対にあり得ません。

「川の氾濫」を「毎年流行しているインフルエンザ」に置き換えてみると、 現在のインフルエンザについての対処の不合理さが見えてきます。感染を 防ぐためのワクチン接種を受けずに、病気に感染した後に病院で処方され るタミフルを服用する、という事はどんな意味を持つでしょう?

もちろんそういった状況になったのには、理由があります。
大人の場合にはワクチン接種を受けた後にインフルエンザを発症する事は まずありません。けれども、子供の場合には免疫系の発達が未熟ですので、 他の病気と同様に病気により弱く、ワクチンを接種しても病気を発症してし まうことがあるのだそうです。さらに、現在のインフルエンザ・ワクチンが、 まだ麻疹やポリオのワクチンのように、「一度接種すればその後の一生病気 から守られる」、というようなものになっていない為に、毎年接種を受ける 必要がある事も、「ワクチンは効かない」という誤解を与えているようです。

また、現在流行しているウイルスが健康な大人ではあまり生命に危険を及ぼさ ない「弱い」タイプで(安静にしていれば自分の身体の免疫系が撃退してくれ る)、毎年流行を引き起こしている為に、インフルエンザが治療薬が無い怖い 感染症で、気管支炎や肺炎などの合併症により重症化する事もある(実際に、 インフルエンザが大規模に流行した年には、高齢者の死亡数は増加します)、 という意識が薄れている事も、ワクチン接種を受ける人が少ない原因だと考え られるそうです。

実際には、その年に流行したウイルスに対応するワクチン接種を、流行が始 まる前に受けていれば、大人はほどんど症状を発症しませんし、免疫系がしっ かり発達してくる中学生以上なら、抗体を身体が作りだしてウイルスを撃退 できる確率はより高くなるそうです。まあ、毎年接種を繰り返す必要がある めんどうさはあるのですが、昔は実は子供は毎年インフルエンザワクチンの 接種を受けていましたし、現在でも子供へのワクチン接種が義務化されてい る先進国は少なくないのです。

参考までに出しておくと、医療費が無料の英国では現在ワクチン接種をしても インフルエンザの発症を防げない事が多い低年齢の子供達へのワクチン接種を 止める事が「医療費節約のために」提案されていますが、免疫系の弱い子供達 だからこそ、あらかじめ抗体を用意させて軽症化させる事によって、生命への 危険性を減らすべきなのだ、という反論が出されています。(わずかな支出減 よりも、子供達の危険性を減らす事が大事だ、という主張のようです)

ワクチン接種は当然ですが、誰でも受けられます。予防措置ですので健康保険 の対象にはなりませんが、免疫系が弱っている高齢者などの特定の人達は合併症 の危険性が高い為に補助が出されていたりします。インフルエンザが熱譫妄を 引き起こす事もある激烈な病気で、しかもウイルス疾患なので治療のための薬物 が存在しない、ということを理解していて、子供に流行前(11月〜12月)にワク チン接種を受けさせている親は少なくはないのです。

現在進められている研究が上手くいって、どんなタイプのインフルエンザ・ウイ ルスが流行しても、それを一生有効に撃退してくれるインフルエンザ・ワクチン が、早く登場するように祈りたいものです。

タミフルを飲む、というのは「激烈な症状を引き起こす病気」に感染した後で、 対処の為にとられる行動ですが、実際には健康な人ならタミフルを服用する必用 性は有りません。(海外では健康な人には処方されません) タミフルの副作用 を懸念するのならば、あらかじめワクチン接種を受けさせることが、安心の為 の一番の投資になると思います。

医者にかかれば病気は治る、薬を飲めば病気は治る、というような妄信を剥ぎ 取る事も大事かもしれません。この記事の題名は「タミフルはインフルエンザ を治さない」です。ノロウイルスによる胃腸疾患が大規模流行を起こしたので、 ウイルス性疾患を治療する困難さはより多くの人に認識されたかもしれません。 鳥インフルエンザが世界中に広がり、タミフルでは増殖が抑制できないウイルス も出現していますが、感染の機会をなるべく少なくし、感染後に他人に感染を 広げない様にする手立てはとれるのですから、病気についての正しい知識と、 病気を予防する為の手段についての知識を持つ事は、より大切になってきて いると思います。



1/23 yahooの掲示板からいらっしゃった方々へ


ここの記事をリンクされた方の「新型インフルエンザの危険性」の認識について、いささか疑念がありますので、「新型インフルエンザの流行に際しては、ワクチン以外に対抗できる手段は無い」、という事について、判りやすく説明することにしました。ここまで読みに来る探求型の人達には、そのくらいのサービスをする価値はありますから。

まず、今回流行している「鳥インフルエンザ・ウイルス」の増殖力は、非常に高いものです。それは現在人間で流行している通常のインフルエンザ・ウイルスが、喉と鼻の粘膜でだけ増殖するのとは異なり、全身の細胞で増殖する非常に危険なものなのです。それは最悪の場合、ウイルスに汚染された飲み水や食べ物によっても感染が広がる、という事を意味します。

人間に感染しているのは、現在の所「鳥インフルエンザ・ウイルス」で、それが変異して人間から人間に感染するような能力を獲得したウイルスは、幸いまだ発生していません。でもそれは逆に言えば、新しく出現することが恐れられているウイルスに対抗できる「抗体」を持っている人間が、誰一人いないという事を意味します。つまり、「全世界の人間がインフルエンザに免疫を持たない幼児の状態に有る」のです。

大人がインフルエンザ・ウイルスを撃退できるのは、大人の身体の免疫システムがインフルエンザ・ウイルスに対抗するための「抗体」を作り出す能力を持つからです。免疫システムは、身体に入りこんだ病原体やウイルスに対抗する「抗体」を生産しますが、新しく身体に入りこんだ病原体について学習し、それに対応する「抗体」を生産するまでには、有る程度の時間がかかります。

人間の身体の免疫システムは、病原体について学習する事によって、それと戦うための能力を身につけます。ですから良く知られているように、身体の免疫システムが未熟で、学習能力が低い幼児・小児は、ワクチン接種をしてもインフルエンザに感染します。(その為、幼児・小児のインフルエンザ・ワクチン接種は2度行われていますが、大人の免疫システムは能力が高いので1度だけです) 子どもがいる方なら当たり前に知っている部分ですが、感染力の高い病気に対するワクチン接種は、義務接種になっています。
インフルエンザの感染とワクチンの効力

インフルエンザ・ワクチンは皮下接種ワクチンで、血液中に多くの抗体作り出しますが、インフルエンザ・ウイルスが感染・増殖する鼻粘膜や気道ではほとんど抗体が作り出されないそうです。それがワクチン接種の効果が低い原因だとされています。これを補うために「点鼻薬」方式のワクチンの開発が試みられています。最近の記事で出ている「遺伝子組み替えウイルス」によるワクチンは、「点鼻薬」として投与される事が予定されています。
増殖力の高い、未知の病原体による感染は、しっかりした免疫システムを持っている大人であっても危険です。それは過去の爆発的な感染による死者数が証明しています。例えば、1918年に流行し世界中で数千万人を殺した「スペイン風邪」のウイルスが最近復元されていますが、その増殖能力は現在流行しているウイルスの数千倍だったそうです。ウイルスの増殖力が高ければ、身体が未知の病原体について学習をして「抗体」を作り出し、それに対抗する間に膨大なウイルスが誕生してしまいます。

「ワクチン」接種というのは、あらかじめ身体の免疫システムに病原体についての学習をさせ、「抗体」を作り出す力を与えるために行うものです。身体の免疫システムが「外敵」に対する学習をするという事については、花粉症のシーズンが来ると、身体がすぐに(本来は無害な花粉に対する)「抗体」を作り出して、花粉を撃退しようとする事を考えると判りやすいかと思います。既に学習したものに対応する人間の免疫システムの能力は高いのです。当たり前ですが、ウイルスは人間の身体の細胞を破壊しながら増殖します。ですから、数が少ないうちに押さえ込めれば、身体に生じるダメージは少なくてすむのです。

「タミフル」は、インフルエンザ・ウイルスの増殖を抑える力を持ちますが、薬を投与しても増殖するタイプの「H5N1」型ウイルスは既に出現しています。「タミフル」を投与してもウイルスの増殖が止められない場合があり得るので、それだけに過剰に期待をするのは危険だと考えられていますし、既にタミフルだけでなく、別種の薬物(リレンザ)を貯蔵している国もあります。

身体の免疫システムが、入りこんだ病原体に上手く対応できない場合には、「サイトカイン・ストーム」という免疫システムの暴走が起きる危険性が指摘されています。それは大量のウイルスに対抗するために、膨大なサイトカインが分泌されてしまう状態です。そしてそれが起きた場合には、臓器の機能が正常に保てなくなり死亡すると考えられています。実際ベトナムでの鳥インフルエンザの死者の検死によって、それが起きたのでは無いかという指摘もされています(幼児のインフルエンザ感染で生じている「インフルエンザ脳炎・脳症」などでも、同様に疑われてれているようです)

念のために書き添えますが、サイトカインが大量に作り出されるのは、体内に大量のウイルスが存在するからです。ウイルスをおさえ込めなければ、ウイルス感染によって細胞が破壊される為、感染した人間は死亡する事になります。サイトカインストームというのは免疫システムが強すぎる為に生じるのでは無く、免疫システムが対応不可能なほどウイルス増殖能力が高い事を意味します。幼児のインフルエンザ脳症が、通常のインフルエンザ感染で生じている事を考えてみてください。 それは、「強すぎる免疫システム」が引き起こすのでは無く、免疫システムが対応できない量のウイルスが体内に存在する為に生じるのです。

増殖能力の高い、「抗体」でしか撃退できない未知のウイルスに対抗する為に、自分の身体にそれを撃退する抗体を作り出す「ワクチン接種」以外の方法があるなら、是非知りたいものだと思います。「通常の健康な免疫システム」であっても、対応できる限度という物が存在します。現在のインフルエンザ・ウイルスに感染しても死なないですむのは、それが増殖能力の低い、これまでにも感染を引き起こして「世界中の人間の免疫システムがなんらかの形の学習をしている」ウイルスによるものだからなのですから。

もちろん、「自分は健康だから」という事を思うのは本人の自由です。例えば、1918年の悪性のインフルエンザ流行は複数年続いていますが、一旦感染によって免疫を獲得し・生き延びた人間は、その後の年の流行に対しては安全になっていたのですから。当時の死亡数は世界人口の10%、感染者の20%程度だったとされています。

その数字をどのように判断するかは、読む人間次第です。ちなみに終戦直後の日本の「乳児幼児死亡率」は10%程度でした。現在は0.5%です。病気に感染して死ぬ幼児を減らす為に、栄養・衛生状態の改善、医療の充実、危険な病気に対応するための予防接種が推進された結果が現在の数字だ、という事は知っておいてください。戦後日本の幼児が急激に病気に強い体質を獲得したので、死亡率が激減したわけではありません。

実は、治療法として即効性が期待できる、「抗体医薬品」といわれるものが有ります。「人間の抗体」を作り出すように遺伝子操作した動物(マウスや牛)によって、病原体に対抗する為の「抗体」を作り出し、それを注射するというものです。体内に病原体と戦うための兵隊(抗体)を一気に投入する事になるので、確実に有効だと考えられています。ですが、これは現在はまだ研究段階で、実用化されるのは先になります。今すぐに使えるものでは無いですし、生産方法から考えても、世界中の人間に大量に投与できるとは考えられません。自分の身体で「抗体」を作れるようにするのが、やはり確実でしょう。

現在世界中で監視されているのは、「鳥インフルエンザ」で、人間が大量に感染する「新型インフルエンザ」はまだ登場していません。でも例えば、日本で新型インフルエンザの感染に対する対策が初めて検討されてから、既に10年が経過しています。感染症と闘うためには、長期的な視点が必用なのです。

日本では、現在新型インフルエンザに対抗する為のワクチンの開発の最終段階、人間での臨床試験の段階にあります。(参考記事: 日本政府、ワクチン開発への緊急支出決定) これは既に動物での段階では、有効性が高いことが確認されているものですが、ワクチン生産は一気に増産できるわけではないので、それが心配されています。またこれは「新型インフルエンザ」そのものに対応するワクチンではありません。実際の病気が発生する前に、それに対応するワクチンを作ることは出来ないのです。

人が持っている情報量は、いろいろです。誰の意見を聞くのも自由ですが、誰がどんな情報に基づいて何を言っているのかを判断し、あなたの命を守るのはあなた自身です。私の言葉を裏付けるのは、私が収集した情報でしか有りませんが、貴方はWeb上の信頼性の高い情報源で、それらを全て検証できます。ですからこれを読んでも納得できないなら、自分で情報を探してみてください。ちなみに鳥インフルエンザは現在進行中の病気ですので、特に英文の医学・科学誌の最新情報が有益です。

あなた自身が納得出来る正確な知識を持ち、それに基づく防御行動をとって下さい。


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「新型インフルエンザ」は、非常に事態の展開が早いです。
まず記事の日付を確かめ、必ず表紙で最新情報を見てくださいね。









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